塩分は多すぎても少なすぎても犬の寿命を削ります!

愛犬が喜ぶからといって、かまぼこやハムといった塩気の多い人間用の食べ物を平気で与える飼い主がいます。

その一方で、犬に塩分は大敵だからと塩分を極力排除した食事のみを与えようとする飼い主も。

どちらの飼い主が正しいかといえば、はっきり言ってどちらも正しくありません。

犬も人間と同じ哺乳類。

生きていくためには多すぎず少なすぎずの、適切な量の塩分が必要なのです。

人間の感覚で犬に食べ物を与えると必ず塩分過多になる

犬に食べさせてはいけないものの代表格として「塩分の多い食べ物」があげられるでしょうか。

これはあくまでも「塩分が多い食べ物」がダメなのであって、「塩分が含まれている食べ物」がダメ、というわけではありません。

それなのに、なぜ「塩分」の部分ばかりがことさら強調されてしまうのでしょうか。

それは、塩分がしっかりと含まれている人間用の食べ物を、何も考えずに平気で犬に食べさせてしまう無知な飼い主があまりにも多いからです。

「でも、犬にも塩分は必要なんでしょう?だったらオヤツ代わりにハムの1枚や2枚、食べさせたって塩分が摂取できて逆にいいじゃない!」という反論が聞こえてきそうですが……。

仮に飼い主の体重が50kgで、愛犬の体重が1/10の5kgだったとします。

しかし、だからといって犬にハムを与えるとき、1/10のサイズにちぎって与えているでしょうか?

もしもまるまる1枚を与えているとしたら、それを人間サイズに換算するとハム10枚ということになります。

ちなみに一般的なロースハム1枚に含まれている塩分量はおよそ0.5g。

そして体重5kgの犬が必要としている1日の塩分摂取量がおよそ0.317g~0.635g。

これを1日に必要な食事に含まれている塩分とは関係なく摂取させているとしたら……。

もうおわかりいただけましたよね。

そう、人間の感覚で人間の食べ物を安易に犬に与えてしまうと、いとも簡単に塩分過多になってしまうのです。

そもそも、なぜ塩分が必要なのか?

しかし、そもそもなぜ生きていくうえで、私たち人間も犬たちも、塩分が必要なのでしょうか。

それは、一言で説明するなら塩は体内の水分量を調節し、細胞と体液(血液、リンパ液、脳脊髄液など)の間の浸透圧を調節する役割を担っているからです。

もちろん、塩の役割はそれだけではありません。

胃酸や胆汁といった消化に関わる体液の成分としても欠かせませんし、腸内における栄養の分解と吸収にも必要です。

さらには血液中のphバランスを維持するためにも使われますし、脳からの神経伝達にも塩――ナトリウムイオンが関係しています。

要するに、生命を維持するためには全身において塩が必要なわけですね。

犬は1日にどれぐらいの塩分が必要?

さて、そんな生きていくうえでは絶対に欠かすことのできない塩分ですが、実際のところ犬の体はどの程度の量の塩分を必要としているのでしょうか。

たとえば、命をつなぐギリギリ最低限の塩分量は、体重1kgに対してナトリウム4mg程度といわれています。

もちろん、命をつなぐギリギリのラインなわけですから、実際にはこれより多く摂取することが理想。

言い換えるなら、これを下回ると命の危険にさらされる、という意味でもあります。

健康な体を維持するために犬が必要としているナトリウムの量で考えた場合、体重1kgに対して25~50mg程度。

しかし、なぜこれだけ数値の幅があるのかといえば、それは犬の体が必要としているナトリウムの量には諸説があり、数値を一つに絞ることが非情に難しいからです。

とは言え、犬の体に個体差があることを考えると、こういった数値の幅がでるのはある意味当たり前のことなのではないでしょうか。

さて、前述した体重1kgに対して25mg~50mg程度いう数値。
これはナトリウムの量であって塩の重さではありません。

これを塩分として換算するためには、「ナトリウムの量(mg)×2.54÷1000」という計算式にあてはめる必要があります。

これによって食塩としてのグラム数が導き出されるわけですね。

冒頭で記述したハム1枚に対する体重5kgの犬のくだりは、この計算式からはじきだした数値です。

そして「体重1kgに対して25mg~50mg」を食塩の量に換算すると、0.0635g~0.127g。

体重5kgの犬が1日に必要なナトリウムの量は125mg~250mgとなりますから、食塩の量としては0.317g~0.635gということになります。

つまり、1枚に塩分が0.5g含まれているハムを5kgの犬に2枚食べさせたとしたら、塩分は1gとなり、いとも簡単に1日に必要としている塩分量を超えてしまうことがわかります。

塩分を摂取しすぎた犬の体はどうなる?

塩分を多く摂り過ぎた犬の体は、大量の水を必要とします。
これは水分によって体内のナトリウム濃度を薄めようとしているからですね。

すると、大量に摂取した水分によって血液の量が増えることになります。

血液の量が必要以上に多いということは、それだけ血液を循環させるための臓器――すなわち心臓に負担をかけることに。
この状態が続くことが心臓病へとつながっていくのです。

犬が喜ぶからといって安易に塩気の多い食べ物を与えていれば、いずれ心臓が悲鳴をあげることになるでしょう。

愛犬のことが可愛くて可愛くて仕方がない、ずっと長生きしてほしい!などと言いながら、一方では塩分を含んだ人間用の食べ物を与え続けている飼い主さんは、自らの手で愛犬の寿命を削っていることを、もっと理解するべきです。

塩分が足りないと犬の体はどうなる?

では反対に、必要な量の塩分を摂取できなかった場合はどうなるのでしょうか。
塩分過多の犬は水をたくさん飲みますが、塩分が不足している犬は土やコンクリートをなめる、他の犬のオシッコや人の手足をやたらとなめる、といった行動が見られるようになります。

これは本能的に塩分を補おうとしている行動なので、思い当たる場合は犬の食事の塩分量について見直す必要があるでしょう。

そのまま塩分不足の状態が続けば、やがて元気は消失し、食欲がなくなります。

さらには筋肉痛などでも苦しむことになり、神経系に異常をきたして痙攣やふらつきなどが見られるようにもなるでしょう。

また、重症化するとシュウ酸カルシウム結石が生じやすくなるため、腎臓に負担をかけることにもなります。

腎臓は機能が失われると、もとには戻ってくれません。
腎不全を起こせば驚くほど短い期間で死に至ってしまうのです。

人間の食べ物に含まれている塩分量

犬の体にとって、塩分は多くても少なくても命を削ることになります。
とはいえ、きちんとした品質のドッグフードが主食であり、人間の食べ物を不用意に与えていなければ、塩分量の過不足をあまり気にする必要はありません。

問題は、ドッグフードによって1日に必要な塩分量を確保している状態で、塩分の多い人間の食べ物を与えられているような場合。

もしくは犬用のレシピではなく、人間とほぼ同じような感覚で作られたメニューを毎日食べている場合、といったところでしょうか。

たとえば犬に与えることが多い食品を例にあげると

・かまぼこ1きれ/塩分0.3g
・ちくわ1本/塩分0.6g
・さつまあげ1個/塩分1g
・魚肉ソーセージ1本/塩分1.9g
・ロースハム1枚/塩分0.5g
・ウィンナー1本/塩分0.3g
・ベーコン1枚/塩分0.4g
・三角チーズ1個/塩分0.8g
・食パン6枚切り1枚/塩分0.8g
・ロールパン1個/0.4g

当たり前のことですが、2個あげれば塩分量の数値は倍ですし、食パンにマーガリンやバターが塗られていたら、これもまた塩分量がさらに多くなります。

飼い主が食べていると「ちょうだい」と目をキラキラさせて寄ってくるものだから、つい可愛くてあげてしまう……。

こんなことを繰り返していれば、愛犬の心臓が悲鳴をあげてもなんら不思議ではありません。

愛犬を家族の一員だと思うからこそ飼い主がするべきこと

犬はペットではない、家族の一員です。――本気でそう思うのであれば、塩分が多く含まれている食べ物を犬に与えるべきではありません。

犬を喜ばせることと、犬を甘やかすことはまったくの別物です。

犬がほしがるからと言って、自分が食べているものを犬に与えてしまう飼い主は、「犬を喜ばせたい」と言いながら、「喜んで食べる犬を見て自分が喜びたい」だけなのだと自覚するべきではないでしょうか。

心の底から愛犬に長生きをしてほしいと願っている飼い主は、不用意に人間の食べ物を与えるようなまねはしないはずです。

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