魚介類が犬の食材には不向きな理由

人間と犬の共通点は、どちらも哺乳類であり、雑食動物であること。

しかし、犬は人間に比べて食べられない食材がたくさんあります。

犬といえば何でもガツガツ食べてしまうイメージがありますが、実は人間こそが調理次第でほぼどんなものでも食べてしまえる、すさまじい雑食動物なんですよね。

たとえばイカやタコ。

人間は刺身で食べて良し、焼いて食べても良し、揚げても美味しくいただいてしまいます。

しかし、イカとタコは生だろうと加熱しようと、犬の食材には向きません。
それはいったいなぜでしょうか。

■イカとタコの何がいけないのか?

犬や猫にイカを食べさせると腰を抜かす――。

こんな話しを聞いたことはありませんか?

腰を抜かすという表現に、なんとなく胡散臭さを感じる人もいらっしゃるのではないかと思います。

しかし、これはあながち間違ってはいません。
イカやタコにはチアミナーゼというチアミン(ビタミンB1)を2つの分子に分解する酵素が含まれていて、これが犬の体内で悪さをする可能性があるのです。

ではなぜビタミンB1が分解されると良くないのかといえば、それはビタミンB1が神経機能や脳を正常に機能させる働きに深く関わっているからです。

つまりはチアミナーゼによってビタミンB1が分解されてしまうと、神経系統に異常をきたすことになってしまうんですね。
そのため体がふらふらして足もとがおぼつかなくなる、足腰が立たなくなるといった症状がみられるようになるのです。
そしてこの状態を「腰を抜かす」と表現しているわけですね。

■チアミナーゼが多く含まれているのは内蔵

チアミナーゼが最も多く含まれているのは内蔵部分です。
つまり、イカやタコの内臓部分は絶対に犬に食べさせてはいけないわけですが……。実はチアミナーゼは熱に弱いため、加熱すればあっさりと活性は失われてしまいます。

まあ、そもそもが酵素なわけですから熱に弱いのは当然といえば当然なのですが。
さて、そんなチアミナーゼですが、内臓に一番多く含まれているとはいえ、他の部分に含まれていないわけではありません。
つまり、イカやタコは内臓だろうが他の部位だろうが、とにかく生のままで犬に食べさせてはいけない食材です。

イカやタコのお刺身が美味しいからといって、愛犬におすそわけをしていると、神経に異常をきたして倒れてしまうかもしれないのでご注意ください。

■加熱処理をしたイカとタコも犬の食材には向かない

加熱をすることでチアミナーゼはあっさりと活性化を失ってしまう――。
であれば、煮たり焼いたりすれば犬に食べさせてもいいのでしょうか。

結論から言うなら、煮ようが焼こうが揚げようが、イカもタコも犬には食べさせないほうがよい食材です。
と言うも、イカもタコも犬の消化器官(胃腸)では消化がしづらいからなんですね。

チアミナーゼによる神経系統の異常も怖いですが、実は消化がしにくいという最も基本的な部分こそが、犬の食べ物として不適格な最大の理由と捉えるべきなのかもしれません。
であれば、加熱処理をしたイカやタコをミンチやペースト状にして、食材に加えればいい思われるのではないでしょうか。
確かにそこまで下処理をしたものであれば、イカやタコを犬に食べさせても大丈夫そうですよね。

しかし、そもそもそこまでして犬にイカやタコを食べさせる必要があるのかは疑問です。
と言うのも、太古の昔から犬は基本的にイカやタコを食べる機会はなかったはず。
そしてその結果として、犬の胃腸はいまもイカやタコを食べる仕様にはなっていないのです。

つまりは、無理をしてまで食べさせる必要のない食材、ということに他なりません。
であれば、一手間も二手間も三手間もかけてイカやタコを食べさせるより、もっと犬の食性にマッチした食材を食べさせるほうがずっと建設的なはずです。

犬の体に余計な負担をかけない食事こそが最良の食事であり、イカやタコはそこに到達するまでに手間暇がかかりすぎてしまうからこそ、食材として不適格なんですよね。

■スルメはさらに別の危険性をはらんでいる

スルメとは、イカの内臓を取り除いた後に干して乾燥させたもののことです。
いわゆる、おじさん達が一杯やるときの酒の肴として有名な、ペッタンコのアレのことですね。

未加熱のイカを干したものですから、そもそもが犬の食事には向いていません。
さらには、消化に悪いことに加えて乾物であるという性質が、犬にとってはより危険。

犬はなんでもほぼ丸飲みしてしまう生き物です。
スルメにしても、例に漏れずほとんど噛み砕くことなく飲みんでしまうと予想されますが、それが胃の中に入ったあとが怖いのです。
胃に落ちたスルメは胃液を吸って膨張し、胃壁を刺激することになるでしょう。
すると嘔吐しやすくなるわけですが、この吐き戻しのときが危険。
と言うも、胃液を吸って膨張したスルメが食道に詰まってしまう可能性があるからです。
仮に嘔吐はしなかったとしても、胃と十二指腸をつなぐ幽門に詰まるかもしれません。
そして幽門を通過できたとしても、その先の腸内で詰まる可能性があります。
酒のおつまみとしてスルメをかじっていたら、愛犬が食べたそうにしていたので、おすそ分けをしてやった。
ここまでは飼い主と愛犬のほのぼのとした話しであっても、その後犬が腸閉塞を起こしたとしたら、シャレでは済まない事態です。

■寄生虫の問題も忘れてはダメ!

もう一つ忘れてはいけないのが、寄生虫の問題です。
イカにはアニサキスが寄生していることがありますので、万が一生きたアニサキスを犬が口にしてしまうと、人間と同様に激しい嘔吐や腹痛に苦しむ可能性があります。

イカの刺身を素麺のように細く切るのは、アニサキスを殺すためでもあるといわれていますが、そもそも犬に生のイカを食べさせるべきではないことは前述した通り。
それなのに生で食べさせたあげく、アニサキス症で苦しめることになってしまったら、何重にも罪深いことであると認識するべきです。

また、タコにもニハイチュウという寄生虫がいます。
実はニハイチュウはイカにも見られ、イカにしろタコにしろ腎臓内に寄生しています。
寄生虫の問題も含めて、やはりイカもタコも絶対に犬に食べさせてはいけない食材なのです。

■貝類も犬の食材には向いていない

貝類もイカやタコと同様に犬に食べさせるものとしてはおすすめできません。
そもそも犬は魚介類の消化が苦手であり、こと貝類に至っては、消化するための酵素をまったく持っていないのです。
その結果、もしも犬が貝類を食べたとしても、ほぼ消化しないまま排泄することになってしまうでしょう。

だったらいいじゃないかと思われそうですが、そもそも消化できないものが胃腸を通過していくのです。
負担をかけないわけがありません。

■犬にとっては毒性の強い貝類がある

人間が食べる分には特に問題のない貝類であっても、犬が食べれば毒性を示すものがあります。
たとえばサザエ、アワビ、トコブシ、トリガイ。
これらの貝類には光線過敏症を発症させてしまう危険性のある毒素(ピロフェオホルバイドa)が含まれているので要注意です。

特に3月から5月にかけてこれらの貝は毒素が強くなり、誤食も含めて犬が口にしてしまうと、耳に腫れや痒みを生じさせます。
これを犬が掻き毟ることで重症化させてしまい、悪化すると耳が壊死してしまう可能性もあるのです。

これがいわゆる「犬猫はアワビを食べると耳が落ちる」と言われる所以(ゆえん)なんですね。
また、貝の内臓にはイカやタコと同じくビタミンB1を分解するチアミナーゼが含まれているため、生で食べれば神経系統に異常をきたしてふらつきや痙攣(けいれん)などを起こす可能性があります。

■食べさせるつもりはなくても食べてしまう誤食に注意

イカやタコ、貝類などの魚介類を愛犬に食べさせるつもりはない――。
そう思っていても、誤食事故は起きるものです。
その多くは盗み食いやゴミ箱をイタズラしたことが原因。
しかし、これは犬が悪いわけではなく、飼い主が油断したことによる結果です。

たかがイタズラによる誤食と思われがちですが、実は愛犬の命をおびやかすこともある、とても危険な状況。
私たち人間が食べても大丈夫なものが、犬にとっては毒になることもあり、そういった食材は思った以上に身近なものであることを、きちんと意識しておくべきではないでしょうか。

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