ドッグフード

グレインフリーだから良い、という単純な選び方は失敗のもと

犬の祖先はオオカミである――。

もっと細かく言うなら、分類学上はタイリクオオカミの亜種、というのが一応の定説になっているでしょうか。

神山ゆき
神山ゆき
しかしゲノム解析をした結果、1万5千年ほど前に人類と暮らし始めた犬の祖先は、後に犬とオオカミそれぞれの祖先となる種類であり「実は犬でもオオカミでもなかった」という研究報告がされているんですよね。

まあ、犬の祖先がオオカミであるにしろないにしろ、食性を考えるうえではどちらであっても大差はないのかもしれません。

というのも、いずれにしろ「肉食に近いけれど雑食」という食性の動物だからです。

というわけで、このところは犬の食性に着目したグレインフリー(穀物不使用)のドッグフードがやたらと脚光をあびているわけですが……。

グレインフリーとは原材料に穀物を含まないドッグフードのこと

 

グレインフリーとは、直訳すると「穀物を含んでいない」という意味です。すなわち、ドッグフードの原材料に穀物を使っていないことを表わしているんですね。

あえてそういう名前をつけるくらい、これまでドッグフードの原材料には、当たり前のように穀物が使われてきました。

トウモロコシ、小麦、大豆などがその代表格ともいえる穀物です。

このトウモロコシ、小麦、大豆は安価で質の悪いドッグフードに必ずといっていいほど大量に使われていることから、粗悪な穀物というマイナスのイメージが定着している感が否めません。

では、プレミアムフードと呼ばれるハイクラスなドッグフードには穀物が使われていないのかといえばそんなことはないんですよね。

ものすごく原材料の品質にこだわったプレミアムフードにも、穀物が使われているものはいくらでもあります。

ただし、トウモロコシ、小麦、大豆はさすがにあまり使われていません。

代わりにオーツ麦や玄米、大麦といった、もっと原価の高い穀物が選択されている製品がほとんどです。

神山ゆき
神山ゆき
しかし、グレインフリーのドッグフードは「穀物不使用」と銘打っているだけあって、原価が高めであろうと品質がお墨付きであろうと、とにかく穀物に分類される原材料はいっさい使われていません。

グレインフリーのドッグフードは穀物不使用、肉類たっぷり

 

人間にしろ犬にしろ、栄養はバランス良く摂取することが最も重要であり、一番大切な栄養素のみをひたすら摂取すればいいというわけではありません。

犬の食事における五大栄養素の比重は、動物性たんぱく質>脂質>炭水化物>ビタミン>ミネラルの順。

しかしそこから考えると、炭水化物が主体である穀物は、犬の食事において絶対的に不必要というわけではない、とも言えるのではないでしょうか。

それなのに、なぜ穀物を不使用にしたドッグフードが注目されるのかといえば、それはひとえに犬の胃腸が穀物を消化するのには向いていないからです。

犬の胃腸や歯のつくりを見ても、雑食動物とはいっても、その食性が肉食寄りなのは一目瞭然。

それなのに、消化を苦手としている穀物を大量に食べ続けていると、結果として胃腸を弱らせてしまうことにつながりかねないわけです。

神山ゆき
神山ゆき
だからこそ、グレインフリーのドッグフードは犬の食性に合わせて、最も重要な栄養素である動物性たんぱく質――すなわち肉類の配合量が一番多く作られているわけですね。

これは、穀物入りのフードに比べるとかなりの量。まさしく、肉好き動物のための肉たっぷりフードというわけです。

しかし、だからといって炭水化物が必要ないわけではありません。栄養バランスの点から考えたら、どうしても炭水化物のもとになる食材は必要です。

そこで、グレインフリーのドッグフードには穀物を使わない代わりに、イモ類や豆類といったが原材料が組み込まれています。具体的にはサツマイモ、ジャガイモ、えんどう豆、グリーンピース、レンズ豆といった種類が多く使われているでしょうか。

グレインフリーのドッグフードは総じてコスト高

 

グレインフリーのドッグフードは、基本的に犬の食性にフィットさせた原材料の割合で構成されています。その結果、コストが高い肉類がたっぷりと使われていて、なおかつ炭水化物の原材料には安価な穀類が使えません。

しかも、グレインフリーのドッグフードのほとんどが、すべての原材料の品質にこだわっている点を前面に押し出しています。

神山ゆき
神山ゆき
つまり、肉類も通常のドッグフードよりハイクラスなものを使い、なおかつ安い穀物は使わない代わりに品質にこだわった原価の高いイモ類や豆類を加えているんですね。

さらにはその他の野菜や果物、ハーブの品質についてもワンランク上のものを選んでいる以上、原材料の原価が総じて高くなってしまうのは、どうしても避けられないことです。

その結果、とても素晴らしいドッグフードに仕上がることは間違いありませんが、もれなく販売価格に反映されることになるわけですね。

現に、とても品質が良いとされているグレインフリーのドッグフードは、かなり価格が高め。

ドッグフードの成り立ちを考えたらある意味当然の結果ですが、経済的な負担が大きくなりすぎれば、いくら愛犬に食べさせたくても、断念せざるをえない飼い主さんが続出してもおかしくありません。

仕方がないことといえ、なんとももったいないような気がします。

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グレインフリーだけが犬の食事においての正解ではない

 

グレインフリーのドッグフードは、理屈だけで考えれば、確かに犬にとって理想の食事なのでしょう。

しかし、人間にとって最良の食事に正解がないのと同じく、犬の食事においてもすべての犬にフィットする魔法のドッグフードはありません。

仮に穀物入りのドッグフードを食べさせると体調を崩しがちだった犬が、グレインフリーに変えて劇的に改善したのだとしたら、それは間違いなくその犬の体に合っていたのでしょう。つまり、その犬にとってはグレインフリーが最良の選択です。

しかし、グレインフリーに変えたことでたんぱく質の摂取量が増加し、たんぱく質の代謝量が増えたことで腎臓や肝臓を弱らせてしまうケースだってありえるのです。

また、グレインフリーのドッグフードと比較する際に、中堅程度の穀物入りドッグフードを引き合いに出すことがありますが、それって実はおかしな話しではないでしょうか。

本当の意味で比べるなら、消化がよくなるようにきちんと処理を加えた品質の良い穀物を、適性な量で使用した優良な穀物入りドッグフードと比較するべきなんですよね。

このあたりの対決に関しては、どうもぼやかされているような気がしてなりません。

グレインフリーと比べてどちらが良いのかは、犬の体質によってそれぞれに違うはず。つまりは正解がどちらか片方だけに偏るはずはないのですが、このあたりは大人の事情というものなのでしょうか。

グレインフリーを選ぶなら、なぜ良いと思うのかをしっかりと考える必要あり

 

グレインフリーは犬の食性を考えると、確かに良いドッグフードであることは間違いありません。

しかし、愛犬の体質や体調を考えずに選んでしまうと、「なんだか前より体調が悪くなった気がする……?」という事態をまねいてしまうことも。

グレインフリーは良いドッグフードで、穀物入りは悪いドッグフード。どうもそういうイメージ戦略が横行している気がしてなりませんが、それにまんまと乗せられて選んでしまうと、高い買い物をして愛犬の体調を崩すこともありえるのです。

神山ゆき
神山ゆき
犬たちは自ら食べるものを選ぶことができません。すべては飼い主さんの選択にかかっていることをどうぞお忘れなく!

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